交通事故における高次脳機能障害と後遺障害等級認定④【等級として認定されるための条件とは?その2】

残存した障害が高次脳機能障害として後遺障害の等級認定される為には、①脳障害があること、②障害の内容と程度が重要になります。

前ページでは、①脳障害があることについて記載しました。

このページでは、②障害の内容と程度について記載していきます。

 

②障害の内容と程度

高次脳機能障害と認定された後、その障害がどの等級に認定されるかを判定するにあたり重要なのが、障害の内容と程度になります。

高次脳機能障害として認定されていれば第一級~第九級の間の等級が認定されますが、高次脳機能障害ではないが類似の症状や障害が残存していると認定された場合は、非器質的精神障害として第九級~第十四級のいずれかの等級となります。

自賠責保険は「等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」(平成13年金融庁・国土交通省告示第一号「自動車損害賠償保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」)とされている為、高次脳機能障害の判断基準においても労災保険の基準を当てはめて検証し、最終結論とすべきとされています。

労災保険における高次脳機能障害等級の区分に関する認定基準には、就労において必要となると思われる4能力(意思疎通能力・問題解決能力・作業負荷に対する持続力持久力・社会行動能力)をどれだけ喪失したかという度合いに着目し、4能力それぞれの喪失の程度、介護の要否によって等級評価を行うことになります。

具体的な基準としては、以下となります。

 

(1)意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)

 

(ⅰ)わずかに喪失:

(a)特に配慮してもらわなくても、職場で他の人と意思疎通をほぼ図ることができる。
(b)必要に応じ、こちらから電話をかけることができ、かかってきた電話の内容をほぼ性格に伝えることができる。

 

(ⅱ)多少喪失:

(a)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、ゆっくり話してもらう必要が時々ある。
(b)普段の会話はできるが、文法的な間違いをしたり、適切な言葉を使えないことがある。

 

(ⅲ)相当程度を喪失:

(a)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためにはたまには繰り返してもらう必要がある。
(b)かかってきた電話の内容を伝えることはできるが、時々困難を生じる。

 

(ⅳ)半分程度を喪失:

(a)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためには時々繰り返してもらう必要がある。
(b)かかってきた電話の内容を伝えることに困難を生じることが多い。
(c)単語を羅列することによって、自分の考え方を伝えることができる。

 

(ⅴ)大部分を喪失:

(a)実物を見せる、やってみせる、ジェスチャーで示す、などのいろいろな手段と共に話しかければ、短い文や単語くらいは理解できる。

(b)ごく限られた単語を使ったり、誤りの多い話し方をしながらも、何とか自分の欲求や望みだけは伝えられるが、聞き手が繰り返して尋ねたり、いろいろと推測する必要がある。

 

(ⅵ)全部を喪失:職場で他の人と意思疎通を図ることができない。

 

(2)問題解決能力(理解力、判断力等)

 

(ⅰ)わずかに喪失:
(a)複雑でない手順であれば、理解して実行できる。
(b)抽象的でない作業であれば、一人で判断することができ、実行できる。

 

(ⅱ)多少喪失:(ⅰ)と(ⅲ)の中間

 

(ⅲ)相当程度を喪失:
(a)手順を理解することに困難生じることがあり、たまには助言を要する。
(b)一人で判断することに困難を生じることがあり、たまには助言を必要とする。

 

(ⅳ)半分程度を喪失:(ⅲ)と(ⅴ)の中間

 

(ⅴ)大部分を喪失:
(a)手順を理解することは著しく困難であり、頻繁な助言がなければ対処できない。
(b)一人で判断することは著しく困難であり、頻繁な指示がなければ対処できない。

 

(ⅵ)全部を喪失:課題を与えられてもできない。

 

(3)作業負荷に対する持続力・持久力

 

(ⅰ)わずかに喪失:概ね八時間支障なく働ける。

 

(ⅱ)多少喪失:(ⅰ)と(ⅲ)の中間

 

(ⅲ)相当程度を喪失:障害のために予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督がたまには必要であり、それなしには概ね八時間働けない。

 

(ⅳ)半分程度を喪:(ⅲ)と(ⅴ)の中間

 

(ⅴ)大部分を喪失:障害により予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督を頻繁に行っても半日程度しか働けない。

 

(ⅵ)全部を喪失:持続力に欠け働くことができない。

 

(4)社会行動能力(強調性等)

 

(ⅰ)わずかに喪失:障害に起因する不適切な行動はほとんど認められない。

 

(ⅱ)多少喪失:(ⅰ)と(ⅲ)の中間

 

(ⅲ)相当程度を喪失:障害に起因する不適切な行動がたまには認められる。

 

(ⅳ)半分程度を喪失:(ⅲ)と(ⅴ)の中間

 

(ⅴ)大部分を喪失:障害に起因する不適切な行動が頻繁に認められる。

 

(ⅵ)全部を喪失:社会性に欠け働くことができない。

 

(5)4能力の喪失の程度と高次脳機能障害等級の区分

 

(ⅰ)第一級:第三級以上に該当する重篤な高次脳機能障害の為、常時介護を要するもの
(ⅱ)第二級:第三級以上に該当する重篤な高次脳機能障害の為。随時介護を要するもの
(ⅲ)第三級:一つ以上の能力の全部を喪失、二つ以上の能力の大部分を喪失
(ⅳ)第五級:一つ以上の能力の大部分を喪失、二つ以上の能力の半分程度を喪失
(ⅴ)第七級:一つ以上の能力の半分程度を喪失、二つ以上の能力の相当程度を喪失
(ⅵ)第九級:一つ以上の能力の相当程度を喪失
(ⅶ)第十二級:一つ以上の能力の多少喪失
(ⅷ)第十四級:一つ以上の能力のわずかな喪失(※MRIやCT等による他覚的所見は認められないが、脳損傷のあることが医学的に見て合理的に推測できるものが第十四級に該当します。)

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